タレントや有名人がテレビに出演するときには2種類のギャランティを受け取っている。
1つはもちろんお金。
もう1つは知名度という財産。

タレント本人やマネジメント事務所にとって、知名度は最も重要な財産だ。
知名度がなければ仕事は来ないし、来たとしても低いギャランティの仕事しか来ない。
だから有名タレントの肖像権には金銭的な価値が法的にも認められている。
これはスポーツ選手でも同じで、日本プロ野球選手会がコナミと日本野球機構を肖像権侵害で提訴したことを覚えている人も多いだろう。
タレントやスポーツ選手は人間であると同時に、事務所や球団が所有する財産という性格を併せ持っている。

知名度が法的にも財産であるということを確認したところで、具体例を見ていこうと思う。

赤字で紅白に出演する小林幸子

小林幸子全曲集 楼蘭

NHK紅白歌合戦の出演料はそんなに高いものではない。
しかし小林幸子は毎年自腹で億単位の金を舞台にかけており、もちろん赤字だ。
少し見方を変えれば、お金を払って紅白で歌わせてもらっているとも言える。

なぜそんな経済的に不合理なことをするのか。
それは紅白に出演すると「格」が上がり、翌年のギャランティが大幅に上昇するという業界の仕組みが背景にあるだろう。
舞台費用に大金をかけることで出場を確実にし、なんだかんだ言って一番大きな歌番組で全国に自分を売り込むことができる。
紅白出場によってギャラは上昇し、投資した金額以上の利益を得ていることだろう。

お金の面から見ると、NHKが小林幸子にお金を払って歌ってもらっているのではなく、小林幸子が広告を出しているといえる。

紅白常連の知名度を悪用した細川たかし

細川たかし全曲集 満天の船歌

紅白で上手く知名度を上げているのが小林幸子なら、紅白で得た知名度を悪用したのが細川たかしだ。
細川は紅白歌合戦に2006年まで32回連続して出場、抜群の知名度を誇っていた。
しかしその知名度を詐欺に利用しようとした円天の波会長が接近、金に目がくらんだ細川は自ら円天のイベントに演歌歌手を斡旋するなど、被害の拡大に大きな役割を果たした。

そして2007年に円天事件が大きな問題になると、細川は紅白出場を辞退(と言うのもおかしいが)、連続出場は途絶えた。
逆に言えば、紅白が円天事件の下地を作ったともいえる。
紅白出演による知名度上昇は、小林幸子の例を出せば億単位の金銭と同等の価値がある。
細川はその知名度を良くないところで換金したのだ。
そういうところは換金レートが高い分、信用が毀損するリスクも高いのだが。

2008年、指定暴力団山口組系後藤組の組長とゴルフコンペに参加したことがフライデーの報道によって明らかとなり、細川がNHKの番組に出演することはなくなった。
しかし細川とともに円天のイベントに出演した演歌歌手、暴力団と親しいタレントは未だにNHKに出演し続けている。

NHKの出演料は民放と比較して低い。
その差額は信用性の高いNHKで「商品」を広告することで穴埋めされている。

関連

細川たかし - Wikipedia

エル・アンド・ジー - Wikipedia