理性の奪還 もうひとつの「不都合な真実」

アル・ゴアと言えば、元アメリカ副大統領で「不都合な事実」を大ヒットさせてノーベル賞も貰って、常にその言動が世界中から注目されている男だ。
そのゴアが書いた「理性の奪還 もうひとつの不都合な真実(The Assault on Reason)」が昨年の2月に邦訳されて発売された。
しかし、まったく話題にはならなかった。
読んでみると、その理由が何となくわかってくる。
ブッシュの暴走を赦したのは、テレビだと書いてあるのだから。

ブッシュの支持母体でもある右派宗教と巨大資本に支配されたテレビ。
国民は投票する議員を30秒のCMで決め、議員はその費用を捻出するのに企業献金を受ける。
恐怖を植え付け、イラク攻撃を正当化する。
ジャック・バウアーが拷問をするドラマ「24」、それを見る駐イラク兵士。
こうした状況を変えるには、インターネットを利用するしかないとゴアは説く。

言論空間としてテレビ局は終始個人に媚びへつらってはいるが、国民の声にはまったく耳を貸そうとはしない。マーケティングやプロパガンダによって意見が捏造され操作されれば、理性に与えられた役割は小さなものでしかなくなる。

アメリカの民主主義における個人の重要性をふたたび主張する機会が、インターネットによって日々、次々ともたらされている。たとえばブログは、マスメディアが伝える不正確な情報に対する抑制と均衡の原理の役割を果たしている。また動画クリップの普及は、テレビが印刷時代からインターネット時代への過渡期のメディアでしかないという認識をますます強めている。 P213

オバマ政権はインターネットを利用した選挙活動が大きな原動力となって誕生した。
選挙活動を支えた個人献金、YouTube。
日本のテレビはオバマを持ち上げる一方で、その選挙活動の内容についてはほとんど報道しなかった。
これは日本のテレビ局にとって「不都合な真実」だからなのか。

関連

YouTubeが生んだ初の大統領? オバマ陣営の“動画物量作戦” - ITmedia News

asahi.com(朝日新聞社):理性の奪還―もうひとつの「不都合な真実」

 著者が強調するのは、特殊利益から大量の政治資金を調達した団体や候補者が流すテレビ広告が、いかに大きくアメリカの政治を歪曲(わいきょく)しているかである。30秒のテレビ広告こそが科学に対する、そして何より「理性に対する攻撃」(本書の原題)なのだとゴアは主張する。

 そして、民主主義を奪還し、再活性化するための方法として、インターネットの重要性を強調する。著者によれば、インターネットがテレビと大きく異なる点は、政治資金のある側から一方的に情報が流されるのではなく、個人が自分の意見を容易に公開できることである。
24-TWENTY FOUR- シーズン6 ハンディBOX [DVD]